先日、緑道から少し外れた住宅街を歩いていると、あるお宅の垣根にふと目を奪われました。整然と並んだコノテガシワの生け垣。その中に、普段はあまり意識することのない“小さな春”が潜んでいました。

よく見ると、柔らかな緑の葉の間に、白っぽい小さな花が咲いています。これはコノテガシワの花。針葉樹らしく目立たない花ですが、こうしてじっくりと見ると、なんとも言えない可憐な造形をしています。
コノテガシワはヒノキ科の常緑針葉樹で、中国原産。日本では庭木や生垣によく使われており、剪定にもよく耐え、整った形を長く保つことができます。
「児の手(このて)」という名前は、枝の広がりが子どもの手のひらのように見えることに由来しています。
そして春、葉の間に小さな花を咲かせます。コノテガシワは雌雄同株の植物で、一本の木に雄花と雌花の両方がつきます。今回見つけたのは、果実(球果)に育っていく雌花。白緑色のぷっくりとした形が可愛らしい。
春になると、小さな花を咲かせますが、注目されることは多くありません。しかし、よく目を凝らせば、葉の間からひょっこりと顔を出す姿に心が和みます。
今回は住宅の垣根で思いがけず足を止めました。剪定されたコノテガシワの間に、小さく咲いた花がちらりとのぞいている。そんなささやかな変化に気づけると、なんだかうれしくなります。